川柳に見る人間の業の不変と江戸時代の年末 ~年初の川柳〜

 動物の頂点にある人類のルーツは数百万年前まで遡る。猿人と呼ばれた時代から類人猿、そして原人、古代人、そして現代の人類、気の遠くなる時を経て今、2013年も終焉間近になっている。幾星霜、喜怒哀楽と共に古代人と同じように命の炎を燃して生きている人間。現在、この地球に生きている人類は白人も黒人も黄色人もすべて同じ種、即ちクロマニヨン人である。古代人と現代人は肉体的、精神的、脳容量、知性の面からもほとんど差がない。大きく変遷してきたのは、人間が関与し続けた環境や進歩して止まない科学・技術の面だけと言っても過言ではない。
 古代人が喜び、怒り、泣き、感動し、思考した内容と我々現代人のそれらとは基本的に何も変わっていないだろう。世界三大宗教である、仏教・キリスト教・回教は2500年から1500年前にルーツを求める。このように古い宗教が未だに世界中で信じられ、生きる上で基本的な指針や救いになっている。古典文学、音楽、演劇、絵画等の分野でも長い時を経て今尚、愛され、親しまれ、心を揺さぶり人に感動を与え続ける。
 日本文芸の一ジャンルに川柳もある。
 川柳の始まりは江戸時代中期・宝暦七年(一七五七)江戸・浅草に住む、柄井川柳という人物が始めた「川柳評万句合」とされている。江戸時代の商人、武士、僧侶、知的階級等を始め、庶民からも、彼の元に数百万句の川柳が集まり、点料を取り、選句された作者へは反物などの賞品を提供したためもあり、大いに人気を博し、宝暦から寛政年間に至る三十年に柄井川柳が選んだ句、八万の中から今に伝えられ親しまれている川柳も多い。あなたもご存じのものが多いだろう。それらを鑑賞すると我々と同じ感性、喜怒哀楽の情があったと親しみを感じる。何れも長く人口に膾炙されるだろう。

 泣き泣きもよい方をとる形見分け
 役人の子はにぎにぎをよく覚え
 雷をまねて腹かけやっとさせ
 本降りになって出て行く雨宿り
 冬の田はわさびおろしのように見え
 黒犬をちょうちんとする雪の道
 仲直りもとの女房の声になり
 這えば立て立てば歩めの親心
 母親は息子の嘘をたしてやり
 孝行のしたい時分に親はなし
 子ができて川の字なりに寝る夫婦

年末~年初の川柳から少々。
 あくる日は夜討ちと知らず煤を取り
   (注…十二月十三日吉良邸の大掃除)
 大晦日首でも取って来る気なり
   (注…大晦日は一年の総決算、掛取りに気合い)
  掛取りが帰ったあとでふてえ奴
   (注…こちらは付を払わされた方)
 女房をちょっと見直す松の内
 羽子板も姉がつくには人だかり
 二、三軒よろよろすると日が暮れる


 

〈寄稿〉安延春彦
ときがね川柳会(東金中央公民館)・暖流川柳会(大網白里市・中部コミュニティセンター)主宰講師。大網白里市文化協会常任理事。
朝日新聞「朝日川柳」昨年度入選数・全国一位(昨年度までに220句) 

川柳2会・会員募集中 ☎090-4957-5595


※文章・プロフィールは2013年発行当時のものです。